コラム

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『耳かき』 2001.2

 

 昔から耳かきが大好きだった。「何度も見る夢」ってのが誰にでもあるだろうけど、ボクの場合それのひとつに「耳かきの夢」がランキングされる。巨大な耳あかが取れる夢。耳の穴の出口よりはるかに大きな耳あかが耳かき棒の上に乗っている。はて、この耳あかはどうやって出口を突破したんだろう? と悩む。

 ボクは耳かきする時、必ず右耳から始める。人に聞くとそれぞれで、左耳から始める人もいるようだ。決まってない人もいる。利き手にもよるんだろうけど、とにかく右耳から始めないと気がすまない。
 なんでかって考えると、やっぱり利き手が関係してくるみたい。ボクは右利きだから、細かい作業は、当然左手より右手のほうが得意なのだ。しかし、左の耳を右手で耳かきするのはさすがに無理。ためしにやってみると、できなくはないが非常に不自然。首が折れそうになる。
 耳かきが好きだからって四六時中やってるわけじゃないから、始める時は手の感覚が確実に鈍っている。まず、器用な右手を使って耳の穴の形を確かめる必要がある。左手から始めると、耳の穴の形を把握するほどの器用さがないから、感覚を戻すのに時間がかかるのだ。右手で耳の穴のだいたいの構造を把握して、その感覚を左手に応用する。

 見事ゲットした耳あかは大きければ大きい程、なぜか嬉しい。人に見せたくなるのはボクだけだろうか。今日は多いなぁというときは、取れた耳あかを紙の上にならべていき「うわぁー、こんなにたまっていたのかぁ」と捨てるのが惜しくなったりもする。

 巣鴨とげぬき地蔵で露店を出している「馬木商店」は、最高級の竹を使用した「オーダー耳かき棒」を販売しているらしい。雑誌で取り上げられたりもしている有名な店だ。ぜひ使ってみたい。「オーダー」ってのが気になる。記憶だと手頃な値段だったはず。
 確かに、人のうちの耳かき棒を借りて耳かきをすると、なんだか調子が狂う。いつも使っている自分の耳かき棒は、何年か使っているうちに角がけずれたりして、自分の耳の穴の癖や耳かきの仕方に合った形状になるようだ。つまり自分仕様の耳かき棒に自然になるわけだ。買ってきたばかりの耳かき棒は紙ヤスリなどでチューニングするといい。と、あるホームページに書いてあった。

 最近は「スッポンスッポン作戦」なる方法で耳掃除をする。耳に小指をすき間なく突っ込んで、勢いよく抜くのである。トイレのスッポンスッポンと同じ要領だ。「ポン!」と音がする。耳の壁にへばりついている耳あかもこの圧力に負けて、少しははがれるような気がする。ただこのスッポン作戦は、鼓膜まで取れちゃうと大変なのでほどほどに。
 金属製の耳かき棒も買ってみた。歯医者さんの道具みたいでどうもしっくりこない。手の油ですべってしまうのも気になる。べっこうや金、銀でつくられた耳かき棒もあるらしい。金持ちは耳かき棒にもお金を使うのか?

 そういえばインターネットで「耳かき」の検索をしたら、耳かきマニアの人がたくさんいるのに驚いた。耳かき好きの人たちの間では話題になっているらしいが、関西には「耳かき屋さん」が一軒あるそうだ。まるで胃カメラのように、ファイバースコープを耳の穴につっこんで、それをテレビモニタに映し出しながら耳掃除をしてくれる。耳かき棒も細いのから長いのまで、各種揃えている。

 時代劇には必ずと言っていいほど膝枕で耳かきをするシーンがある。本来は人にやってもらうものなのかもしれない。確かに女の子の膝枕でやってもらう耳かきほど、気持ちのいいものはない。
 複雑である。耳をかかれるのが気持ちいいのか、女の子の太ももに頭を押しつけられるのが気持ちいいのか……。
  まったく…、イヤー(耳-ear)な終わり方である。

文◎さかせがわてつや




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